戦争と経済破綻(玉木俊明)

経済成長のために国債(公債)を償還することができたというのが、おそらく17世紀頃から現代までの世界史の実相であろう。国債(公債)の発行により戦費を賄い、さらにそれを平時になって返済するというシステムが形成されたのが、近代ヨーロッパの大きな特徴であった。 近世のヨーロッパでは、火器の導入に代表される軍事革命のために、国家の軍事費はうなぎのぼりに上昇した。戦争のためナショナリズムが高揚し、国境とは、中央政府が税金をかけることができる範囲を意味する主権国家が誕生することになった。ここに、近代国家が生まれることになったのである。 国債(公債)の発行は、戦費を調達するためであった。戦時に国債(公債)を発行し、それを平時に償還する。それは、経済が成長するからこそ容易になる。しかし、経済成長がなくなれば、国債(公債)の償還は困難になるはずだ。